寒がりチキンの当たって砕ける珍街道

考察、感想や雑記など。ゲテモノ料理、旅行等趣味についてつらつら書きます。

神様なんかくそくらえ (映画感想)

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http://www.cinematoday.jp/movie/T0020366

 

役者の、引きつけるような演技ではないのに、なにかを放っている
それは生命力とかじゃなくて、もっとドロドロしたもの、もっと人間の本質にあるもののような気がした。
それは主人公ハリーを演じるアリエルの実体験を元に作られているからかもしれないし、亡きイリヤの存在かもしれないし、出演者がみんな役者じゃなくてストリートに生きる人々だったからかもしれない。

 

独特のカメラワークからなる世界観

映像は、よくぶれるし、洗練されていない。荒々しく、遠くからアップしていく時もガタガタと、顔のアップが多くて何かを伝えるというよりも、そのまま、ありのままを映す、切り取ることに集中している。私たちはただ、それを見ることしかできない、情報を受け取ることしかできないと感じた。雑踏を多く映すのも、彼らのおかれている状況が浮き彫りになってよかった。

 

依存

何かに依存して生きることは楽だ。
その日暮らしで生きるハーリーにとって、薬物と恋人に縋ることは生きていく上で必要なことだからだ。
薬を入れている時、イリヤのことを考えるとき、彼女は他のもの見なくていい。それは自分のことも含まれていて、あなた以外は全部ゴミ、というコピーにも現れている。
そして、ハーリーにとってのあなたというのは、イリヤのことであるし、イリヤではないこともあるかもしれない。
つまらないと感じた人も多くいると思うけれど、それはこの映画の本質を分かっていないとかじゃなく、そもそもその人がこの映画に求めているものが根本的に間違っているのではないか。
この作品は、青春映画でも、ドキュメンタリーでもなく、人間の依存心の本質を描いたものだからだ。


リアルとフィクションの狭間

東京国際映画祭で二冠を獲得したこの作品は確かに日本人こそ響くものだと思う
特典映像のインタビューで監督が日本に見て欲しいと言っていたように、日本人の一部でこの世界観が好きな人もいるだろう。ドラッグや、アンダーグラウンドな世界観、性の奔放さ、違法行為。
とくに、虐待なんて一度も受けたことがなく法に守られ健やかに育った人間には、ある種の魅力となって映るかもしれない。世界に、人生に、絶望しながら絶望という概念を知らず、退廃的で破滅的な美しさのある登場人物たち、それを抱擁するニューヨークの乾いた風景。これは、今その瞬間だって起こっていることなんだと作品見終わった後でも感じられる、ハリーを演じたアリエルはこの映画を機に女優として活躍しているけれど、別のハーリーは今もニューヨークの路上で生きているのだ。

 

たくさん賛否両論あり、ごちゃごちゃと書いてしまったけれど、結局のところ映画が終わって目を閉じても、まだ、彼らの息遣いや町の風景が感じられる作品は、
本当に素晴らしい映画だってことだ。

 

ひとつ、とても印象的だったのが一瞬ニューヨークの風景を写した映像で、ザ・ニューヨークの街並みというのを写したくなかった理由について監督インタビューでも触れられていたが、あれが、本当にの人間の本質についてとてつもなく語っている瞬間じゃないかと思う。